デザインを変えたら、売上は上がる?

デザインを変えたら、売上は上がる?

デザインの仕事をしていると、
こういう問いについて考えます。

売上を上げることを目的にデザインすることもあります。

もちろん、私としては「上がります」と言いたいところです。

でも正直に言うと、そんなに単純な話ではありません。

たとえば、チラシのデザインを変えた。
会社案内を新しくした。
ホームページの見た目を整えた。

では、それだけで売上が何%上がったのか。
そう聞かれると、はっきり数字で答えるのはなかなか難しいです。

実際、デザインの効果は、
ネット広告のクリック数のようにすぐ数字に出るものばかりではありません。

特に、会社案内や営業資料、Webサイト、パンフレットなどは、
売上までの距離が少しあります。

会社案内を新しくしたから、翌月すぐ売上が2倍になる。
ホームページの見た目を変えたから、急に問い合わせが何十件も増える。

そういうことは、普通はあまりありません。

ただ、だからといって「デザインは売上に関係ない」と言えるかというと、それも違います。

たとえば、マッキンゼーが行った調査では、
デザインへの取り組み度が高い企業は、
そうでない企業に比べて、売上成長や株主リターンが高い傾向があるとされています。
具体的には、上位の企業は売上成長率で32%、
株主リターンで56%高かったというデータもあります。

もちろん、これは「チラシを1枚作れば売上が32%上がる」という話ではありません。

ここは大事です。

そうではなく、デザインを単なる見た目ではなく、
ブランドづくりや顧客との接点づくり、
商品やサービスの伝え方にきちんと活かしている企業は、
結果として成長しやすいということです。

日本でも、特許庁が「デザイン経営」という考え方を打ち出しています。
これは、デザインをブランド構築やイノベーションに活用し、
企業の競争力を高めていくという考え方です。

つまり、デザインは単なる飾りではなく、
会社の価値や魅力を伝えるための重要な手段だと考えられているわけです。

もう少しわかりやすい例でいうと、
商品パッケージの世界では、
デザイン変更によって売上が大きく変わった事例があります。

たとえば「鼻セレブ」は、
以前の商品名やパッケージから大きく見せ方を変えたことで、
売上が大きく伸びた事例としてよく紹介されています。
動物の鼻を大きく見せた印象的なパッケージと、
「鼻セレブ」という覚えやすい名前によって、
商品の特徴が一瞬で伝わるようになりました。

これなどは、まさに「見せ方」が商品の伝わり方を変えた例だと思います。

また、ペットボトル飲料のパッケージ変更について、
ラベルデザインやボトル形状の変更が購買にどう影響するかを分析した研究もあります。
その研究では、デザイン要素の変更によって、
消費者の購買に与える影響が異なることが示されています。

つまり、色、形、ラベル、名前、見せ方。
そういったものは、消費者の判断にちゃんと影響しているということです。

ただし、ここで注意したいのは、
パッケージデザインと、会社案内や営業資料のデザインでは、
効果の出方が違うということです。

パッケージは、お店の棚で見た瞬間に「買う・買わない」が決まりやすいものです。
だから、デザインの影響が売上に出やすい。

一方で、会社案内や営業資料、ホームページの場合は、
すぐに売上に直結するというより、
信頼感や理解度、相談のしやすさに影響します。

たとえば、初めてその会社のホームページを見たとき。

「ちゃんとしていそうだな」
「ここなら安心して頼めそうだな」
「実績がありそうだな」
「ちょっと古い感じがするな」
「他の会社も見てみようかな」

お客様は、意識しているようでしていないようなところで、
いろいろ判断しています。

営業資料も同じです。

内容は良い。
サービスも良い。
実績もある。

でも、資料が見づらい。
強みが伝わりにくい。
デザインが古く見える。
会社案内、名刺、ホームページの印象がバラバラ。

そうなると、本来の魅力よりも少し小さく見られてしまうことがあります。

これは、とてももったいないことです。

デザインを変えれば、必ず売上が上がる。
そこまでは言えません。

でも、伝わらないことで失っている機会を減らすことはできます。

「問い合わせしようかな」と思っていた人が、少し不安になって離れてしまう。
「この会社に相談してみようかな」と思っていた人が、他社と比べたときに印象で負けてしまう。
営業先で資料を見せたときに、強みがうまく伝わらない。

こうした小さな取りこぼしを減らすこと。
ここに、デザインの大きな役割があると思っています。

デザインは、魔法のように売上を上げるものではありません。

でも、会社や商品、サービスの魅力がきちんと伝わるように整えることはできます。

「古く見える」
「伝わりにくい」
「信頼感が弱い」
「強みが整理されていない」
「選ばれる理由が見えにくい」

こうした状態を改善していくことで、問い合わせや商談、紹介、採用などに少しずつ良い影響が出てくる可能性があります。

だから私たちは、ただきれいなものを作るだけではなく、

何を伝えるべきか。
誰に向けて伝えるのか。
今の資料やホームページで、どこが伝わりにくいのか。
会社の魅力がきちんと表現されているのか。

そういったところから一緒に考えることを大切にしています。

売上アップを簡単に約束することはできません。

でも、見せ方で損をしている状態を減らすことはできます。

そして、その積み重ねが、結果として「相談しやすい会社」「信頼されやすい会社」「選ばれやすい会社」につながっていくのだと思います。

もし今の会社案内や営業資料、ホームページを見て、

「少し古く感じる」
「自社の良さが伝わっていない気がする」
「営業先に出すときに、少し自信がない」
「名刺、資料、Webサイトの印象がバラバラになっている」

そう感じるなら、一度見直してみる価値はあります。

デザインは、売上を一瞬で変える魔法ではありません。

でも、会社の魅力がきちんと伝わるように整えることで、見せ方で損をしている状態を減らすことはできます。

まずは、今の見せ方で本当に伝わっているか。
そこから考えてみてはいかがでしょうか。

本文に入れた根拠は、マッキンゼーのデザイン価値調査、特許庁の「デザイン経営」、鼻セレブのパッケージ事例、パッケージデザイン変更と購買への影響を扱った研究をベースにしています。マッキンゼーは、デザインへの取り組み度が高い企業ほど売上成長や株主リターンが高かったと報告しています。(McKinsey & Company) 特許庁は、デザイン経営を「ブランドの構築やイノベーションの創出に活用する経営手法」と説明しています。(特許庁) 鼻セレブの売上10倍事例はパッケージリニューアル事例として紹介されており、パッケージデザイン変更が購買に与える影響についてはJ-STAGE掲載の研究でも扱われています。(package.poppybox.jp)