東京藝術大学大学美術館で開催されている
「藝大式 美術の“ミカタ”―この夏、藝大生になる―」へ
行ってきました。
何か面白そうな展覧会はないかな、と探していて見つけた展覧会です。
東京藝大といえば、もちろん名前は知っていますし、
上野にあることも知っていました。
以前、小さな演奏会で藝大の音楽関係の建物に
入ったことはあるのですが、美術館を訪れるのは初めて。
「一度、東京藝大に行ってみたいな」という
気持ちもあって、出かけてみることにしました。
今回の展覧会は、ちょっと変わっています。
普通の美術展のように作品を時代順や
作家別に並べるのではなく、「大学の授業」という形式です。
全部で12の講義があり、
美術の歴史、実技、鑑賞、保存修復など、
さまざまな角度から美術を見る構成になっています。
つまり、来場者もこの日だけは「藝大生」になれるんです。
最初に印象に残ったのが「模写」です。
会場では、実際に藝大の学生さんが
作品を模写していました。
制作を始めて何日目かという表示があったのですが、
まだ下描きに近い状態。
「えっ、まだここまで?」と思ったのですが、
逆に言えば、それだけ時間をかけて作品を見て、
少しずつ描いていくということなんだろう〜。
模写というと、私は単純に「そっくりに描くこと」
くらいに思っていたのですが、
この展覧会を見て、その認識がかなり変わりました。
特に驚いたのが、日本の古典絵画の模写です。
源氏物語絵巻などを模写した作品が展示されているのですが、
ぱっと見ると、本当に何百年も前の作品に見えます。
紙が古くなってシワになっているところ。
色が褪せているところ。
絵具が剥がれているところ。
そうした「時間による劣化」まで再現している。
「これ、ずいぶん昔に描かれたものなんだろうな」
と思って制作年を見ると、2000年代。
これにはびっくりしました。
模写というのは、絵柄だけを写すことではないんですね。
作品が現在どんな状態にあるのかまで含めて写し取る。
また、彫刻では「模刻」というものも紹介されていました。
絵画なら模写、彫刻なら模刻。
考えてみれば当たり前なのですが、
私は「模刻」という言葉自体、今回初めて知りました。
ほかにも、若い頃の藤田嗣治が描いた
肖像画などが展示されています。
友人や家族を描いた作品を見ると、
後に世界的な画家になる人にも、
当然ながら学生時代があったんだな、と。
あと、やっぱりうまいです。
これから行く人には、
実際に会場で「こんなものまで藝大にあるの?」
という驚きを味わってもらった方が面白いので
あまり書かない方がよいかもしれません。
ネタバレは気をつけないと・・・
といいつつ・・・
私が特に見たかったのがゴッホにまつわる展示です。
なんと、ゴッホが実際に使用したという
版画のプレス機が東京藝大にあります。
「なぜ、それが藝大に?」
と思いますよね。
その理由も展示の中で紹介されています。
何より、ゴッホが実際に触れて使った機械を、
ガラス越しとはいえ、こんなに間近で見ることができるというのは
不思議な感覚でした。
擦った作品も展示されています。
ゴッホの独特のタッチのうねりも
版画でも再現されていました〜
もう一つ面白かったのが、
中国から日本に留学し、藝大で学んだ人物を取り上げた展示です。
学んだあと中国へ戻り、
美術教育に関わっていったという話なのですが、
それを見ながら、
「そういえば、中国人の画家や美術家の作品を、
日本の美術館で見る機会って意外と少ないな」
と思いました。
もちろん私が知らないだけかもしれませんが、
ヨーロッパの画家を紹介する展覧会に比べると、
かなり少ない気がします。
もっと中国やアジアの近現代美術を紹介する展覧会が
あっても面白いのでは、なんてことも考えました。
岡倉天心の『茶の本』を扱った講義などもあり、
本当に内容は盛りだくさんです。
この展覧会にはちょっとしたお楽しみがあります。
1限ごとの展示(講義)を一つ見終えるごとに、
用紙にスタンプのようなものを押していきます。
終えた達成感、押すのが楽しく嬉しいです。
12個全部揃えたあと、
「藝大式 美術の“ミカタ”」を学んだ証の
修了証の印を押せます。

記念に残ります〜
12講義あります。
正直に言うと、後半は、
「まだあるのか……」
とも思いました。
一つひとつの内容が濃いので、全部じっくり見ようとすると、かなりのボリュームです。
もう少し少なくてもいいんじゃないかな、なんて思ったりもしましたが、
それだけ見応えがあるということでもあります。
美術の作品だけを見るのではなく、
「どうやって学ぶのか」
「どうやって作品を見るのか」
「どうやって昔の作品を残していくのか」
そんな、美術の裏側まで少し覗くことができる展覧会でした。
この「藝大式 美術の“ミカタ”」は、
2026年から2028年まで3年間、
毎夏開催されるシリーズ企画で、今年が第1回なのだそうです。
来年はまた違った「藝大の授業」が見られるのかもしれません。
それもちょっと楽しみです。
美術が好きな人はもちろんですが、
「東京藝大ってどんなところなんだろう?」という人にもおすすめです。
2026年9月23日(水・祝)まで開催されています。
興味のある方は、ぜひ足を運んでみてください。
詳しくは公式サイトをご覧ください。
「藝大式 美術の“ミカタ”」公式サイト